始まりの春

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 「今更じゃねw」  「うるさい」  「冷たいw」  男2人は体育館に入る。  「なぁ、巡」  「なんだ」  ほどよく日焼けした小麦色の肌をした爽やかな男子、藤堂巽は隣にいる無表情な男子、綾瀬巡に話しかける。  「一年いるけど、なかなか慣れないねぇwこの歓声」  生徒会がステージに登っただけで、黄色い歓声が体育館を包む。そう、ここは男子校である。  黄色い声を出しているのは女子ではなく、男子、である。←ここ重要。  「そうだな…」  遠い目で巡は生徒会を見ていた。  高校生活2年目に突入した2人は初日からゲッソリしていた。    「静かにしろ」    鶴の一声で、体育館が静まり返る。  「生徒会会長の伊集院隆明だ」  偉そうな口調でそう話す綺麗な男。そう、この男がこの学園の生徒会会長なのである。話すたびに口から覗かせる八重歯が可愛いとよく聞く。  聴き心地の良い低い声で、生徒たちを魅了する。…この言い方するのもなんか変か。  巡はポケットに手を突っ込んだ。聞く態度ではない。巽はもう諦めているのか、イヤホンをつけて音楽を聴いていた。巽は巡に向かって親指を見せた。  「音楽という名のBLボイスドラマだ!!」  うん、ドヤ顔で言うことじゃないな。  それに続くように、生徒会の紹介が始まる。    「副会長の柊出雲です」  黒縁の眼鏡をかけていて、凛々しい印象の人だ。穏やかで常に笑顔でいるために、王子様と呼ばれているらしい。  …男子に王子様って呼ばれる気持ちはどんな気持ちなんだろうな。  「会計の里見佑で~す!」  いかにもチャラそうな見た目で、妙に伸ばした口調で生徒たちにウィンクをする会計。  金髪で、目立つピアスをつけていて、いつも誰かといる。1人が無理なタイプなんだろう。  「書記の犬飼由利…」  大きな体からは想像もつかないほど、小さな声で彼は言う。長い前髪で顔が隠れていてよく見えない。会計と仲がいいらしい。    「2年目、3年目に突入した高校生活。3年間しかない青春を心から楽しめ。そして今年は新しい1年生が入ってくる。この学園の誇りを教えてやれ。では、大いに楽しめ!」  隆明の言葉に、再び黄色い歓声が上がる。  巡は耳栓、巽はイヤホンをしていたので、鼓膜の衝撃はそれほど受けなかった。巡はじっと隆明の顔を見つめた。バチっと目があったが、すぐに逸らされる。  「なんで会長見つめてんのー?」  「いや、なんとなくだ」  「ハッ!!まさか、恋の…」  「俺で妄想するな、殴るぞ(真顔」  「ごめんなさい」
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