始まりの春

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 始業式が終わり、教室に向かう生徒たち。巡たちが通ろうとすると、道が空く。それはなぜか。  巡が学園の中で異様な存在だからである。ほとんどの人は初等部から入ってきている。しかし、巡と巽は違う。  特待生として、去年から入ってきたのだ。巽は生まれながらの明るい性格ですぐに馴染んだが、巡はそうは行かなかった。  いつも無表情で、凛としていて、飄々とそこに存在している。  平凡ではあるが、どこか非凡さが感じられる。  関わりたくないという生徒が多いのだ。  そのおかげで、巡は静かに生活できるのであった。    「相変わらず怖がられてるねーw」  「まぁ、好かれるよりはいいな」  「え、俺はいいの?」  「お前は一緒にいて楽だからな」  「おぅふ、急なデレww」  「何があったときはお前を生徒会と風紀委員会に差し出せるだろ」  「なにそれ、やめて!!」  それまでにヘラヘラしていた巽が巡の頰に貼られている痛々しい絆創膏にそっと触れた。  「…痛い?」  自分がされたわけじゃないのに、痛そうに顔を歪む巽。  巡は巽の頭を軽くぽんっと叩く。    「大丈夫だ。お前は気にしなくていい」  「でも…」  「大丈夫」  巡の力強い眼差しに見つめられ、巽は口を閉ざした。  一年前から続く巡への仕打ちに巽は耐えられなくなったのだ。  周りと違うからって、嫌われ、疎まれた。果てには学園から出て行けと制裁のようなものも受けた。  そしてそれは、今も続いている。  それでも、巡は凛としてここに存在している。  本当に何にも思っていないように。何も感じていないように。  「巽…いつものヘラヘラしたお前じゃないと調子狂うんだよ」  「巡…それはデレですか?」  「うん、それでいいよ、もう」  「うへへへ」  巽ははにかんだ。その笑顔を見て、巡は軽く笑う。
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