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おまけ
結婚して二年後、私達の間に子供が生まれた。
肌の白い、髪の毛がくるくるの可愛い女の子で、祖父になった父と父になった慎は抱き合って喜んだ。
二人は天使、天使と騒ぎ、目に入れても痛くないほどの溺愛ぶりを発揮した。父も私が嫁いでからは下手くそな笑顔を浮かべる様になった。母は何十年ぶりかの父の笑顔を下手くそすぎて、ただ顔のシワを集めている様にしか見えないと言っていたけれど、どこか嬉しそうだった。
「天使ですよ、お義父さん!」
「そうだな、慎くん、天使以外の何者でもない」
完全に意気投合した二人は手を取り合って娘を見ていた。
「お義父さん抱っこしますか?」
父は恐る恐る娘へ手を伸ばした。
すやすやと寝ている娘が何かを察知したかの様に、ぱちっと目を開けた。
一瞬の間が開き、娘と父が顔を見合わせた。
初孫と感動の対面。
しかし、娘は顔を段々と赤くし、泣き出してしまった。
父の顔が、困った様な下手くその笑顔から、鬼の様な無表情へと変わっていた。
「また笑えない理由ができてしまった」
父が残念そうに口を開いた。
次に慎が必死に娘に笑い掛けると、娘の泣き声はさらにボリュームを上げた。
「お義父さん、僕にも笑えない理由ができてしまいました」
父親になるのは大変だな、と私は泣いている娘を優しく抱き上げた。
その様子を母は、どっちが本当の親子だか分かんないね、と言い、笑って見守っていた。
おしまい
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