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亮子さんとオレとで、黒いスーツの人を出迎えた。最初の人が大きくて見えなかったせいで気が付かなかったけれど、後ろにまだ4人もいた。みんな黒い、暗い色のスーツを着ている。
小さな会議室に連れ立って入る。普段は先生たちの打ち合わせ用の部屋で、オレ含めて子どもは使うことができない場所。今日は特別だ。来客はオレに用があるのだから。
すべすべした木のテーブルの上に冷たい麦茶が人数分置かれる。黒い人(その1)が立ち上がり、亮子さんに名刺みたいなものを渡した。オレは亮子さんの隣に座る。目の前に、ずらりと並ぶ黒ずくめ。
「お時間作っていただきありがとうございます。お電話でもお伝えいたしましたとおり、本日はですね、こちらのXくんを、この国の『顔』として指定いたしたく伺った次第です」
黒い人(その1)が話し始める。下手くそなラジオニュースなんかでよく聞くような、爽やかさを取り繕ったような大人の声だなと思った。
用件は亮子さんからなんとなく聞いていたけれど、今ので一気に、これが現実のことなんだと思い知らされる。
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