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「小太郎は、僕に親友でいれるかと聞いてきた…」
数十メートル先では妖怪と人間が非現実的な戦いを繰り広げているというのに、大亜はそんなことは気にもならず、呆然と立ち尽くしていた。
「…答えられなかった」
大亜にとって、小太郎の正体よりもそちらの方がショックであった。
小太郎の悲しげな顔が頭から離れない。
あの場で即答できていれば、彼のあんな顔は見ずに済んだかもしれないのに。
非現実的な戦いの場に目をやる。
小太郎と妖怪狩りの男たちの戦いは互角のようにも見える。
しかし2対1ではやはり小太郎は不利。
少しずつ、小太郎が押され始めているように感じた。
この場に自分が現れたこと、「親友であれるか」という問いに即答できなかったこと。
彼は強気を装っていたが、心の中は冷静なものであるはずがない。
(どれもこれも、自分のせいじゃないか…)
今なら答えを言える。今逃げてしまえば、二度と彼には会えないかもしれない。
伝えなくては。
大亜の体はもう、駆け出していた。
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