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~ Side 柚希 ~
………
…
乾いた空気と独特な匂いが満ちる下駄箱が
想太と別れた私を迎える。
「柚希、おはよう。」
「おはよー、結子。」
下駄箱で靴を入れ替えていると
同級生の神崎 結子に声をかけられる。
「今朝も見てたよー。
相変わらず弟くんと仲良し過ぎない?」
「仲良いよ。」
「否定しないのね。」
肘で軽く小突かれる。
想太たちと家族になるにあたって
私は中学の時にこの街に転校してきた。
結子はその時に初めてできた
私の大切な友達だ。
気さくで話しかけやすい良い子だ。
「ていうか弟離れしないの?
いつまでも弟くんと一緒に登下校なんて。」
「いやぁ、そんな必要ある?
そういう子たくさんいるじゃん。」
「えー、私は一人っ子だからわかんないけどさ。
普通はもうちょっとだけ
ギスギスしてるもんじゃないの?」
「うーん…。」
そう言われて今朝の想太の言葉を思い出す。
『だ、だってなんか恥ずかしいし。』
「想太は恥ずかしいのかなぁ…?」
「そりゃそんだけベッタリなら
さすがに恥ずかしいと思うけど…。」
「うーん…。」
さっきの想太の発言を思い出して独り言ちると、
すかさずに結子からツッコミが入る。
姉弟になって約3年。
私は想太と本当の姉弟のようになりたい。
周りからはよく距離が近いと言われるが
私にとってそれはいい事だと思っている。
私は母を失った想太に
もう悲しい思いはさせたくないのだ。
ただそれだけなのだ。
「まぁ…この距離感をやめる気は無いけど。」
「……ブラコン。」
「そうだよ?自他ともに認める。」
「それはもう末期では?」
「ふふふ!なんとでも言うが良いぞ〜!」
「そろそろ弟離れしなさいよ。」
「……いやでーす。」
呆れたという風に首をすくめる結子。
私たちはこれでいいのだ。
嫌われない限りは
私は想太の傍を離れるつもりは無い。
家族と離れ離れになる苦しさは
父と離れた私にもわかるから…。
私が彼にできるのはそれくらいなんだ。
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