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~ Side 想太 ~
………
…
教室に入るといつも通りの喧騒が僕を包んだ。
廊下に満ちていた肌寒い空気は
教室に入るとヒーターと
クラスメイトの談笑で優しく温められる。
静かに自席につこうとすると、
妙な違和感を感じた。
僕の席は1番後ろの窓側から2列目の席だが、
隣に新しく一対の机と椅子が設置されていた。
「……?」
不思議そうにその席を見つめていると…
「おはよー、想太くん。」
「想太、おはよう。」
「あ、おはよう。2人とも。」
今しがた登校してきたであろう
友人2人に声をかけられる。
「どうしたの?じーっと隣の席見つめて。」
「いや、先週までここに席なかった気が…。」
「…んー、そうだっけ?」
あまり関心がなかったかのように彼女、
華落 香織さんは目線を上げて記憶を辿る。
「どうやら今日転校生が来るみたいだぞ?」
「…転校生?」
「えー、もうすぐ冬休みのこの時期に?
男の子かな?女の子かな?」
「さぁ…そこまではわかんないな。」
そんな情報を教えてくれたのは
もう1人の友人の初城 輝。
2人は演劇部に所属する高校からできた友達だ。
そもそも昔から友人が多くなかった僕は
中学の友人と高校でバラバラになってしまった。
初めは友達ができるか不安だった。
しかし、柚希さんの助力…
もといいつもの僕との絡みを
僕の教室で見せつけたおかげか、
空気が和らいでこうして友人もできた。
そういう意味では
本当に柚希さんには感謝しかない。
「まぁ、女の子でも想太には
仲良いお姉さんがいるもんな。」
「今朝も見たよー。
相変わらず仲睦まじいねぇ。」
「……。」
もっとも、こんな風にからかわれ目的で
空気が和らいで話しかけられたのだが。
そういう意味では
本当に柚希さんには恨みしかない。
「だ、だいたい香織さんだって
お兄さんがいるじゃないか。」
「私は兄さんとそこまで仲良くないもん。
兄さんに彼女さんができて冷たくなったし。」
「くっ…。」
「まぁまぁ…。」
悔しいがぐうの音も出なかった。
確かに僕ら姉弟は仲良すぎる。
逆に仲が良すぎて義姉弟だという憶測が
飛び交う隙間すら微塵もないほどだ。
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