1枚目 夕焼けの駅前

6/20
前へ
/158ページ
次へ
……… … そんな風にたわいも無い談笑をしていると… キーンコーンカーンコーン 冬の乾いた空気を震わせて、 1日の始まりを告げるチャイムが 学校中に鳴り響く。 「ま、想太もそこそこにシスコンってことで。」 「どういう結論よ…。」 「私も兄さんともっと仲良くしよーっと。」 「……。」 結局チャイムがなるまでの10分程度、 僕が如何にシスコンなのかと からかわれただけだった。 しかし、柚希さんとの仲が良く見られている ということは悪いことではなかった。 いつか本当の姉弟のようになれるといいな…。 「ほらお前ら、席につけー。」 雑談していた生徒たちが 担任の先生の入室とともに 各々席に着き始める。 僕も隣の空席に一瞬だけ目を向けてから 静かに着席した。 転校生か…どんな子だろう。 「よし、全員座ったな。朝のHR始めるぞ。  薄々勘づいてる者もいるかもしれないが、  1人このクラスに新しい仲間が加わる。」 「「「おぉ…。」」」 気になっていた事がいの一番に発表される。 この時間で転校生がお披露目となるようだ。 ポロポロと零れた生徒たちの声は やがて大きな波となる。 一瞬で教室がうねるようにざわつき始めた。 「おーい、静かにしろ。  よし、じゃあ入っておいで。」 全員の目線が教室の前のドアに集中する。 僕もそんな有象無象の1人だった。 ガララ… 静かに扉がスライドして入室してきたのは… どことなく儚げな雰囲気の漂う少女だった。 「……。」 黙って彼女を見る。 黒髪に短い髪型。 小柄な体格に似合う童顔。 中学生と言われてもおかしくないほど その容姿は幼さを残しているようだった。 随分と上からな感想を抱いたが、 言っても僕らはまだ高校1年生。 あどけなさでいえば中学生とは1年しか違わない。 しかし彼女の容姿は周りの女の子以上に 『無垢な少女』という印象が強かった。 そういう意味では、 柚希さんは茶髪のセミロングヘア。 パッチリとした二重こそ転校生と似ていたが、 彼女よりもどこか大人びた表情な気がする。 背格好も彼女よりも大きいため、 年上というイメージが強い。 いや…なんで僕は今… 柚希さんの容姿を思い出したんだ…? あながちシスコンも間違いでは無い ……かもしれない。 なんだか酷く恥ずかしくなった。
/158ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加