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……………
………
…
ピピピピッ…ピピピピッ…
「んぅ…」
スマートフォンから鳴る電子音で目を覚ます。
随分と苦しい夢を見ていたような気がする。
「……さむっ。」
しかし、毛布を被り再び微睡みへ。
冬の寒さが広がる師走の冷たい空気。
朝起きるのを億劫にさせるには
僕にとっては十分すぎた。
このまま二度寝を決め込むとしよう。
意識を落とすように体の力を抜く。
ベッドが沈み込むのを感じていると…
トントントン…
誰かが階段を上る音が聞こえる。
「想太、起きてー。」
コンコンとノックする音ともに、
優しげな声が戸の外から聞こえる。
「……。」
しかしほんの少し煩わしい。
あと5分は眠っていたい…。
「…朝ごはん作ったのだけどー。」
声の主、彼女の料理はとても美味しい。
非常に魅力的な誘いだ。
しかし今の眠気に勝てるものは
おそらくこの世に存在しない。
拒否するようにゴソゴソと寝返りを打つ。
「……冷めちゃうよー?」
ほんの少し寂しげな声。
僕は義姉のこの声に弱い。
「……今起きる。下で待ってて。」
「わかったー。」
少し明るくなった声色に安心する。
眠気を振り払い、
重たい体を持ち上げて着替えを始める。
窓から射す朝日と寒さを体全体で感じ取る。
今年も冬がやって来ようとしていた。
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