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「おーい、想太?聞いてる?」
「あ…あぁ、ごめん。何かな?」
物思いに耽っていると
怪訝そうに隣から声をかけられる。
すっかりと聞いていなかったな…。
「だから、今日買い物に付き合ってくれる?
牛乳切らしてるし他にも食材買いたいの。」
「うん、おやすい御用だよ。」
「ん、ありがと。
じゃあ放課後教室まで迎えに行くね。」
「え、えぇ…いいよ。」
ぶっきらぼうにそう応えてしまう。
「えぇ!?なんでよ!」
「だ、だってなんか恥ずかしいし。」
「いつもの事じゃん。」
「いつもそれでお姉さんと仲良いね
ってからかわれるんだけど。」
「私だって教室で友達から
ブラコンブラコン言われてるよ?」
「……恥ずかしくないの?」
「全然?」
義姉は何も臆することなくそう言う。
正直気にすることないって言うのはわかる。
僕だって未だに
思春期全開の男子って感じで
良くないなとは思っているのだが…。
いかんせん義姉は距離感が近いのと、
ここ3年程度で急に姉ができた感覚に
自分自身が慣れてないのもあるのであった。
「というか私は実際、
想太のこと大切だと思ってるしね。」
「そういうこと言うから
周りにからかわれるんだよ?」
「公言してるから大丈夫。」
サムズアップする柚希さん。
僕がからかわれる原因もこの人のせいだな
となんとなく理解した。
「まぁ…いつも通り教室で待ってるよ。」
「ん、いい子だね。頭撫でてあげよう!」
「うん、大丈夫。」
するりと義姉が伸ばした手から逃れる。
頬を膨らませる彼女を横目に、
気づけばもう校門の前だった。
なんだかんだで義姉の提案を
受け入れてしまうあたり、
僕もそれなりに悪い気はしていないのだった。
「じゃあ、また放課後。」
「うん、じゃねー。」
僕は高校1年生、
柚希さんは高校2年生なので
ここの昇降口で別れる。
下駄箱に到着すると、
寒さが広がる空気とともに
簀子の乾いた匂いがどこか心地いい。
今日もいつも通りの変わらない毎日が
始まろうとしていた。
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