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はじめに。
私はある時期、非常に疲れたなと感じていました。
人間たちの欲望、業(ごう)、因果、縁起、そして死。
何を見るのも、何に向き合うのもしんどくなってきた、そんなことがありました。
行動派で危険中毒の私らしからぬ観念にとらわれていました。
「どこか、何もかもから解放される場所はないものか」
でも、そんなのは私だけではありません。
そのように考えたことが、だれでもあるはずなのです。
私はある情報を耳にしました。
俗世間から放たれた妖精たちが暮らす村がある。
妖精とは何でしょう。
オカルトや神秘、心霊などの話でしょうか。
私は詳しく訊きました。
「違うよ。実在の少女たちなんだ。僕たちにとって分かりやすくたとえるなら…巫女かな」
巫女さんは、村のなかで神聖な存在です。
処女であり、俗世間に汚されていない感性を持ち、大切にされるべき存在です。
神のご加護を得るための仲介役、そのような存在とされていることが多いのです。
「妖精は、ふつうの少女じゃないとされる。神の子が下りてきて、一時的に地上にいるとされているんだよ。妖精たちは短命なんだ。その短い期間を、ある村のなかで過ごす」
私はその妖精たちが暮らす村を、外からそっと眺めてみたいと思いました。
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