開運寺の寺小姓。少年娼婦。

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「言わなきゃいけないんだけど、あらいざらい話をしないと僕の過去の垢が落とせないんだけど、どうしてもつらい」 航さんは顔を覆います。 結局、空が白けてくるまで、航さんは言葉を続けることは出来ませんでした。 「一つだけ、教えてください」 私は訊きます。9a140dc4-1b4b-410a-acfa-26733e17ab3f 「航さんにとって、虹の市に来ることが本当の目的だったのではないですか?妖精なんか、ほんとうはいない。そして、虹の市でその話を打ち明けて、私を殺そうと思ったのではないですか?」 私は自分の爪を見ました。 土が入り込んでいます。 「さっきひっかいた土のなかに、まだ形を残したままの頭蓋骨を見つけました。 その骨は大人のものです。 航さんは虹の市には死んだ子どもを埋めにくると言いました。 でも、あの頭蓋骨の破片は大人のものでした。 その大きな骨が、航さんの背骨とこすれあったのではないですか? 私は航さんがここへ誰かを連れてきて、話を打ち明けて、そののちに殺しているのではないかと思うのです」 私は訊きました。 過去に読んだ本のなかに、 『なにかを治したいときには、相手に移すのが一番だ』 という文章がありました。 つらい過去がある人間は、あたり構わずそのつらい過去の話をします。 そうすることによって、体内の毒を吐き出しています。 毒素はどんどん溜まっていく一方だからです。 2b89ea40-e676-4f1a-bf63-a8fa712f0614 体内にある毒の結晶になった”過去”が、毎日毎分毎秒、毒を放出する。 その毒素を、言葉に乗せて排出しないと、体すべてが毒されてしまう、と感じるのだと思います。
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