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距離を縮めていきたいけど、何しろ彼女は今まで俺が相手にしてきた女子とは別次元の変わり者で。
付き合うとか、そんな話でも持ち出そうものなら、本当に記憶が飛ぶまでフライパンで殴られそうな気がする。
現状としては、取りつく島もない。
せいぜい、偶然を装って待ち伏せしてようやっと、一緒に帰りながらお互いの近況を話す程度だったのに、それすらも出来ないでいる。
何か気に障ることでもしてしまったのだろうか……
「いよいよストーカー認定されたな」
小馬鹿にした顔を向けて、廉次が鼻で嗤う。
「何もしてないっての。あの子は苦手なんだよ、俺みたいなのが」
たぶん、だけど。
「苦手なんじゃなくて、嫌いなんだろ」
くくっと笑いを堪えながら、廉次が蔑んだ眼を向けてくる。
「ひでえ!」
ほんっと、こいつ友達じゃないだろ。
肩を落とした俺を見つめて、廉次が面倒そうに息を吐いた。
「んで、これを届けたらいいんだな」
「うん……迷惑そうなら持って帰ってきていいから」
腹が痛いのか、別のとこが痛いのか。
なんだか痛みのせいで、俺の覚悟やら根性が萎んでいく。
「なんだよ、さっきまでの勢いが落ちてるぞ」
「廉が自信無くすことばっか言うからだろ。好かれてないのは知ってるけど、嫌われてるってお前に言われると結構くる」
起こしていた上半身を、再びベッドに横たえた。
駄目でもともと。
せめて友達くらいには。
そう掲げていた目標が、ストーカーなんかに陥落するとか、泣きたい。
「晴人が女で悩むとか気持ち悪すぎて笑えるな」
「廉は悩んだことねえの?」
「無いな」
「死ね」
「あーあ、ストーカーは言うこともみっともねぇなぁー」
「違うっつってんだろ!」
ゲラゲラ笑いながら、手をあげる廉次を睨みつけて、俺は布団の中に潜り込んだ。
ああ、腹痛てー。
胸も痛てー。
ストーカーじゃねーもん。
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