エピローグ

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目を閉じて、思い出すのは不機嫌な顔だったり、辛辣な言葉だったり。表情はあまり変化がなく、淡々と喋る口調はきっと彼女の置かれてきた環境がそうさせたのだろう。 神崎さんを〝ひねくれ者〟だと西園寺さんが揶揄していたことを考えれば、避けられているのも、何か理由があるのか。 それとも本当に俺のことが、鬱陶しくなっているのか。 直接聴いてみなければ分からないわけで、それなのに直接話す機会すら無くなっている今、どうすることも出来ない。 一年前の俺との出会いが、僅かでも神崎さんの支えになっているのか、今はそれすらも疑わしいけど。 昔のように厭世的な考えにならないのは、きっと父さんや渚たちのお蔭だろう。 上手くいかなくても、結果的に嫌われてしまうとしても、俺の中で育ちつつあるあやふやなこの気持ちは、息をしている。 それを生かすも殺すも、最後は自分次第。 その〝選択できる環境〟に、今こうしていられることがどんなに幸福か。 自分の気持ちを素直に吐き出せるということが、どれほど奇跡なのか俺は知ってる。 だから、せめて、彼女に伝えられるだけのことは伝えたい──── 「ど阿呆ですか」
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