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「おいおいおいおい!! どうなってんだこりゃあ!!」
聴き覚えのある声と同時に、保健室の扉が乱暴に開く。デジャヴかのように抜群のタイミングで(恐らく扉の外でこっそり中を覗っていた可能性が濃厚だけど)揃いも揃って柊と廉次と、なぜか西園寺さんまで入り口で立っていた。
「どんなタイミングだよ。今取り込み中だから後にして」
「と、取り込んでませんっ!」
「おお、つゆりちゃん〜助けに来たよぉ。さあ、妊娠する前に俺のところにおいでっ!」
「柊の方がヤバイだろが」
「どうでもいいけど晴人、腹治ったのかよ? 昼休憩もう終わるぞ」
「ぐふふ。つゆちゃん、それで初キッスはどんなお味だったのですか?」
「だから! まだしてませんよっ!!」
「「「まだぁー!?」」」
こうして。
俺たちはきっと、遠回りで、不器用で、手探りで。
まるで交わることのない平行線を、一緒に並んで歩くような。
決して甘くはない現実に、挫折や絶望して涙し続けるのだろう。
それでも。
そこから引き上げくれる誰かがいるから、踏み出すことの出来なかった一歩を、口に出せなかった想いを、こうして諦めずにいられる。
俺たちが進む道の先に、何が待っているかなんて、誰にも分かりはしないけど────
「やっぱキスしとこっか?」
「絶対お断りですっ!!」
あの飴みたいにほんのり涙味くらいが、俺たちの未来には、ちょうどいいのかもしれない。
fin
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