93人が本棚に入れています
本棚に追加
俺がバスケ部を辞めた理由なんて、正直覚えていない。むしゃくしゃしてとか、癪に障ってとか。そんな短絡的で感情まかせの理由だった。
進路相談会で学校に来た父さんのせいだったような気もする。
「二年E組って言えば特進クラスじゃん、賢いな神崎さん」
家庭科準備室に現れた地味で暗そうな女の子でも、それなりに夢とか希望とか青春を謳歌する準備はあるのか、と笑えてくる。
手にした一枚の紙は、少し厚めの紙をポストカードサイズに切ったもののようだった。
手描きのイラストと一緒に、料理のレシピとメッセージが、綺麗な文字で書かれている。
「こんにちわー」
二年E組の入り口で談笑している男子二人組に声をかける。どちらも眼鏡をかけていて、いかにも頭が良いことを誇示しているようにも思える。
「どうも」
誰だこいつ。そう顔には出さないけれど、腹の中では思っていそうなほど、下手な笑顔だった。
返事をした方じゃない、見るからに気の弱そうな小柄の男子の肩を叩く。
「ねえ、このクラスにさ、神崎さんって子いるよな?」
「あ、はい。あそこ、窓から二列目の真ん中に座ってるのが神崎です」
意外なことに、気の弱そうで背が低くて、癖毛のその男子は、物怖じするどころか溌剌とした声で答えた。
「ふーん」
「呼びましょうか?」
「いや、いいや。俺が行くよ」
「え?」
なんか苛々する。
こいつらはお気楽で楽しい日々を送ってんのか。ぶち壊してやろうかな、とか。
やっぱ俺、病んでるな。
笑える。
自嘲気味に鼻で笑い、二年E組の中へと足を進めた。
最初のコメントを投稿しよう!