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「お前、ちゃんと寝てないだろ」
「寝てるよ」
2時間くらい。
「あのなぁ、自分の顔見てから言えって。ひでー顔してる」
「そっか? 顔だけは良いって女子からは良く言われんのに」
ガスライターのやすりを回す。二度目で点火した炎に咥えていたタバコを近づける。ジジ。
尖端の紙と葉が燃える良い音。肺いっぱいに吸い込み、鼻から吐き出す。
「やめとけって」
「あ、」
瞬間、口から奪われた俺のラッキーストライク。
「もうちょい体大事にしろって」
「病んでると、タバコは駄目なわけ?」
廉次の手からコーラの缶を奪い取る。
「当たり前だろ」
「健康なら未成年でもいいのかよ?」
プルタブを開ける。パシュ。夏の音がした。
「その通り」
「二十歳未満の者の喫煙は法律で禁じられてますってここに書いてあんじゃん」
「四捨五入したら二十歳だからいいんだよ。それに病んでる奴ってのは、タバコとかギャンブルに依存すんだよ。それ欲しさに平気で人だって殺したりするんだ」
「俺がそうなるって?」
親友にしちゃひどい言い草だな。
「晴人は他人じゃなくて、自分を殺すタイプだろ?」
「……アホらし」
コーラの缶を傾け、喉に流し込む。
砂糖35グラム。こんなんで死ぬわけがない。
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