92人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
「廉、なんか食べるもんないの? 腹減った」
「何でいつも家で食ってこないんだよ」
廉次が面倒そうにテーブルの向かいに腰を下ろす。
「気持ちわりーじゃん。あんな食卓、吐き気がする」
「分からんでもないけど……」
「俺も黒川家に婿養子として入ろうかな」
「まさか姉貴が嫁?」
「じょーだん」
別に相手なんて誰だって構わない。あそこじゃないどこかへ行けるなら。
あの家で過ごす一分間は、俺の寿命を一ヶ月分削っていく。それほどの忌々しい空間だったし、だけど約束だから帰らないわけにはいかなかった。
「まだいんのかよ? 例の人」
「霊?」
「そっちじゃねーわ。おじさんの」
「愛人ね」
「露骨だな」
苦笑しながら、廉が部屋のテレビをつける。
「結婚すんだとさ」
「はぁ? マジかよ……」
「大人ってさ、無責任でいいよなあ」
無責任で、偉そうで。傲慢で、欲深くて。
自分が正しいと本気で思ってる。
最高にイカれてる。
「だからかな」
「なに?」
画面に映し出された今日の星座占い。
蟹座。ラッキーアイテム……
「最近俺さ、食べると吐いちゃうんだよ」
卵焼き。笑えないっての。
最初のコメントを投稿しよう!