ソルティドロップ

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階段を駆け上がり、二階の廊下をE組に向かって進む。時折クラスから顔を出した子たちが、俺を見るなり騒ぎ出す。 廉次の予想通りでなんかむかつくけど。トレードマークだった金髪が黒髪になるというのはそれほど衝撃なのだろうか。 あと少しでE組に到着するという時、手前の女子トイレから出てきた子が、俺に向かって声を上げた。 「霧山先輩っ!?」 「あれ……どっかで会ったっけ?」 「前にうちのクラスに来たじゃないですか! 若宮と同じクラスです! っそれより、髪の毛どうしたんですか!」 その言葉で、彼女が以前、神崎さんのクラスを教えてくれた女子だと思い出す。 「あぁ、あの時の可愛いー子ね。相変わらず元気だね」 「ほんとですか!」 嬉しそうな女の子の表情に、しまったと、ため息がこぼれる。いい加減、こういうの辞めないと。 「髪の毛は……こっちの方が、前よりマシかと思って」 始業の時刻が迫っているため、俺は神崎さんのE組に向かって歩きながら答える。 女の子は興味深そうに俺の隣に並んでついて来る。 「え、彼女さんに染めろって言われたんですか? 私、前の方が好きだったのに〜」 「クズでどうしようもない中身でも、前の方がいい?」 「え?」 同調しておけば、さっさと会話を終えられたのに。前の方が良いと言われたことに、どうしても、ちゃんと説明しておきたかった。 ちゃんと伝えておきたかった。この子を通して、伝わるであろうかつての後輩、若宮に。
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