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真夜中の暗い室内をゲーム機のブルーライトが照らし、静かな空間にはカチカチとボタンを連打する音だけが響いている。
ベッドの上に寝転び、部屋着姿に眼鏡、伸ばしっぱなしの黒髪を後ろで一つに縛っただけの紬がプレイしているのは、少し前に話題になったホラーゲームだ。
買ったは良いがやらずに積んでいた物を、何の予定も無くなったこの機会に消化しているのである。
怖いだけでなく興味深いストーリーではあるが、なかなかに鬱々とした暗い内容に彼女自身の心もどんよりと沈んで行く。
ゲーム内容に引き摺られ気分が落ち込む事に苛つきを感じ始めた頃だ。
何かが、聞こえた気がした。
――あいつらが憎い……
微かだが、頭に直接響くような声だ。なるほどと彼女は納得した。
イヤホンをつけているからだ。ゲーム内の台詞だろうと聞き流し、プレイを続行した。
暫く集中していると、また嫌な気持ちになって来る。
ホラーゲームは、彼女の性に合わないのだろう。
――どうして私がこんな目に……
また声が聞こえる。
今は設定画面を表示している為、ゲームの台詞などでは無い。
内心の動揺を隠し、紬が素知らぬ振りをしてゲーム画面に集中していると、画面の端の暗い部分に人の顔のようなものが映り込んでいることに気が付く。
『ギシャアアアア!!!!』
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