第一章

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ちらりと小日向くんを見ると、目が合い直ぐに逸らした。 貴重な昼休み、正直お腹が空いている。 彼もきっと、早く友達の元に戻りたいかもしれない。 適当に理由をつけて、断りの言葉を告げて職員室から退散したい。 とはいえ、言葉が見つからない。 国語のテストが高得点でも、オブラートに断る語彙力を私は、持ち合わせてない。 どう伝えようかと、渋っていると 大きな影が私に覆い被さった。 前を向くと目の先に、小日向くんの顔があった。 距離の近さに驚いたが、今が伝えるチャンスだと思った。 「こっ、日向くんっ。あの…」 「宮園さん。」 「えっ、何?」 「俺頑張るから、勉強を教えてください。」 小日向くんは、決意をしたような眼差しでそう言うと深く頭を下げた。 想定外の行動に、私は戸惑いどうしたらいいのか分からずにいると、寺井先生が口を開く。 「宮園さん、教えてあげたら?やる気はあるだろうし、とりあえず次のテスト期間までの間だけ。もちろん宮園さんも用があると思うから、週に何回かだけでも。」 「でも…。」 ──人から変な恨みや嫉妬を買いたくない。 それで、トラブルに巻き込まれるくらいならクラスで一人の方がいい。 しかし、小日向くんの真剣な目を見て、心が揺れる。 さっきまで、能天気だったはずなのに切り替えが早いというか…。 きっと彼が好かれるのは、こういう奥底にある中身も含めた所かもしれない。 それと同時に、もし何かあったとしても大丈夫かもしれないという安心感が芽生えた。 私は、両手をぎゅっと握りしめ、軽く呼吸を整える。 「…った。」 「え?」 「分かった。」 「勉強教えてくれるの?」 私は、コクリと首を縦に振った。 すると小日向くんは、驚いたように目を見開いて微笑んだ。
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