第一章

9/14
前へ
/19ページ
次へ
「宮園さん、ありがとう!!」 「うん…。」 ───言ってしまった。  自分で決めて口に出したとはいえ,不安は募るばかり。しかし、彼の笑顔は自然と周りに安心感を抱かせる。偽りのない笑顔。私は,今どのような顔でいるだろうか。こんなにも嬉しそうに笑う彼を見て、羨ましいと思った。 「さ、二人ともそろそろ昼食を食べないと。昼休みに時間を取らせて済まないね。」 「そうだ。俺、弁当食べたらバスケするんだった!!宮園さん、先生ありがとうございました。」 小日向くんは、焦るようにそう言うと先生に頭を下げる。そして,早々と職員室を去って行った。彼が職員室から姿を消すと,嵐が去った静けさが漂う。  私も彼に続くように,先生に頭を下げると職員室を後にした。職員室を出る前に,ちらりと時計を見ると,一時を指していた。 過ぎてしまった時間─── 約束───  一瞬の出来事は,頭の中を回りに巡る。目が眩むようなことばかりだ。不安からか視線がだんだん下へ向く。元に戻れない状況の不安から、私は四度目のため息をついた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加