16人が本棚に入れています
本棚に追加
教科書を取ろうと,ロッカーの前に屈む。すると,ぽんっと肩を叩かれた。
驚いて振り返ると、馴染みのある顔がそこにあった。を
「美波…」
「紗奈元気?」
穏やかな笑みで私を見つめる浅野美波は、学校で唯一の友達である。
美波は小学校時代からの付き合いで、言わゆる幼馴染み。
とはいえ、この子もまた私とは違う世界の子だ。
艶やかで真っ直ぐに伸びている髪、華奢で綺麗な長い手足に、小さな顔にクリっとした目元がとても印象的だ。
「どうしたの?」
「漫画貸してほしいなって。」
「あぁ、あれすごく良かったよね!!」
「うんうん!続き気になっちゃってね。
ヒロインへの愛があるのに、鈍感なんだか焦れったくて、ドキドキしちゃった!!最後のシーンが特に…」
ただでさえ目が大きいのに、それをさらに開いて興奮した様子で喋り始める彼女。
いきなり漫画やアニメに関して語り出すのは、昔から良くあることだが久しぶりに聞いたら、新鮮に感じてしまった。
美波は、無類の2次元オタクで現実に興味がない。
しかし立ち回りのできる彼女は、バレないようにそのことを周りには極力話さない。
好きなものを好きと言って、引かれてしまったり、馬鹿にされたりするのが嫌なのかもしれない。
「今日は、持ってきてないから明日渡すよ。」
「ありがとう!!」
嬉しそうにそう言って微笑むと、美波は周りをキョロキョロと見渡し始めた。
最初のコメントを投稿しよう!