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「どうしたの?」
「紗奈の友達いるかなと思って。」
───不味い。
美波の言葉で、顔が強ばる。
彼女に、嘘をついている事をすっかり忘れていた。
どうしたの?と言って、私の顔を覗き込む彼女に、どう言い訳しようかと、頭を悩ませる。
___入学してすぐ、クラスが離れた私達はお互い焦った。
しかし、私と違って美波は、初めは馴染めないとぼやいていたものの日が立つに連れて友達が1人、2人と増えていった。
廊下で時々見かける美波の周りは、何人かの友達に囲まれていて高校生活を充実しているように見えた。
さらに美波が、アニメや漫画の話だけではなく友達の話をするようになった時は差がついた事を実感させられた。
そして、遂にその話題が私に振られた時、
咄嗟に嘘をついた。
「友達がいる」、と────。
嘘の話を美波は、疑いもしなかった。
なので、友達に会って見たいと言い出した彼女は、時間があれば今日みたいに、ちょくちょく教室に来るようになった。
友達なんているはずがないので、来る度にさらに嘘を重ねる事となった。
「今は、トイレに言ってるんだ。」
「先生に、呼ばれて教室にいない。」
「今日は、休みなの。」
というように、濁していた。
正直、もう言い尽くしてしまって嘘を突き通せる気がしなかった。
いつかバレてしまう嘘なら、真実を言わなければならない。
「あのね、美波。」
「何?」
可愛らしく首を傾げる彼女を見て、唾を飲み込んで決意する。
「私、…」
「宮園さん!!」
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