第一章

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 突然,背後から声をかけられ振り向くと,予想通りの人物が立っていた。 「こ,小日向くん!どうしたの?」 「あのさ、今日の放課後一緒に…」   笑顔でこちらに近づいて,話しかけてくる彼を,美波は不思議そうにじっと見つめる。  動揺が隠しきれない私は,目だけを動かし,双方を見る。こんな奇妙な組み合わせを,美波は一体どう思うだろうか。  一方,小日向くんは,気にする様子もなく語りかけてくる。私は,震える唇を噛んだ。    「宮園さん聞いてる?って,もしかしてこの子と話してる途中だった?」  呑気な小日向くんは,今気づいたのかと突っ込みたくなるほどの一言を言うと,美波を指さす。  美波は,少し眉を寄せて不思議そうに小日向くんに目をやる。そうして,この人誰と訴えかけるように私を見た。  今すぐにでも,この状況から抜け出したい私は,早くチャイムがならないかと廊下越しから教室の時計を見る。しかし、私の願いは届かず,次の授業まで五.六分程時間がある。  「えっと,うん。この子と話してたよ。」  「そっか。急に声かけてごめん。」  「ううん,大丈夫だよ。あっ,美波,この人は,私のクラスメイトでね…」  「初めまして。俺,宮園さんの友達の小日向翔です。」  「そう。小日向くん…ん?」  私は,違和感を覚え,彼を見る。目が合うと,彼は爽やかな笑顔を私に向ける。そんな彼から,反射的に視線を逸らす。   一体,この違和感は何だろうか。気になって仕方がない私は,さっきの会話を振り返る。    彼のことをクラスメイトと紹介したら,彼から名乗ってくれた。  私の友達だと言って自己紹介した。  私の友達だ…と。  私の友達…。  私の…友達?  「とも,だち?」  「どうしたの宮園さん?」  「今,私の友達って…」   「友達だよ,俺たち。」  にっこりとこちらを見て,微笑む彼。  私は心の中で,頭を大きく抱えた。    一体全体,何を言っているのだと。    そうして思うのだ,罪な男ってこういうことを言うのだと。  
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