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「紗奈が言ってた友達って男の子だったんだ。」
「あ,いや,これは…」
私は,呟くように言う美波に返す言葉を探す。
小日向くんは友達と言われたが,私は友達だったの?という感じでいまいちピンとこない。友達の線引は人それぞれだから仕方がないかもしれない。
とはいえ,男友達だなんて,初めてできたものだ。
今の私は,友達と言われても実感が湧かない。
戸惑いが隠せない私は,口を詰まらせていた。
「あの,その言い方よくないんじゃない?」
「えっ…。」
「いや,友達に男とか女とか関係ないんじゃないかなと思って。」
「男の子の友達って言うから。」
「あ,
「確かにそうだよね。そう言うつもりじゃなかったの。ごめん,紗奈。」
「全然‼︎こちらこそ,上手く答えられなかったから。」
「小日向君もごめんなさい。」
「俺は,平気だよ。話してたのに割り込んじゃった。俺こそ,ごめんな急に。」
私達は,お互いがお互いに謝りあう。
とはいえ,全く嫌な空気ではない。むしろすっきりというか、心が軽くなった気がした。
美波は,私と小日向くんに頭を下げるとそろそろ時間だからと言って教室へ戻っていった。
残された私たちは,少し気まずい状況だ。
私は,どうしようかと考える。悩んだ末に,私の体は反射的に小日向くんを背いて,ロッカーから取り出した教科書を胸に抱えていた。
「宮園さん。」
名前が呼ばれたことに気づかないふりをして,教室に入ってしまえばよかった。それなのに,どうしようもないくらいに彼の声に体が勝手に反応して振り返る。ならば,「何?」と素っ気なく言えばいい。それでも、喉の奥で詰まって言葉が出ず,私は口をつぐんでいた。
「今日の放課後勉強教えて欲しい。今日,部活オフなんだ。宮園さんがよければだけど。」
「うんうん。全然平気だよ。」
「本当‼︎よかった。無理とかしてない?何だか体調が悪そうだから。」
「季節の変わり目に弱いだけだよ。体調は,大丈夫。」
「そっか。じゃあ,放課後に教室で。」
「うん。」
私は,こっくりと頷くと教室へ入り,自分の席へ真っ直ぐに進む。ここに入ると,背筋が伸びる。私の地位を理解しなければならないと背中から感じるからだ。さっきまで,彼と普通に話していたけれど,この場では私たちの立場は正反対。彼が,太陽なら、私は地に生えた雑草に過ぎないのだから。
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