第一章

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今日も静かにお弁当を食べて、持ってきた漫画でも読んで、いつの間にか昼休みが終わる予定だ。 ピンポンパンポーンッ─── 突然の校内放送に、スピーカーに注目が走る。 私も、耳を傾けながらお弁当を机に並べた。 マイクが拾ったガサゴソという雑音と咳払いが、スピーカー越しから聞こえる。 「……一年二組の小日向翔と宮園紗奈は、至急職員室に来てください…」 お弁当を開けかけた手が止まる。 ──今、私が呼ばれたのだろうか…。 いや、聞き間違いかもしれない。 「…繰り返します。一年二組の小日向翔と宮園紗奈は、至急職員室に来てください。以上です。」 どうやら、聞き間違いでは無さそうだ。 私は、お弁当の蓋から手をスっと離した。 ブチりと切られた放送と、フリーズした私の思考。 何故呼び出されたかは、正直心当たりはない。 何かやらかしただろうか。 大人しく静かな私だ。 それはないはず…… 頭を悩ませていると、珍しく目の前に人影が現れる。 顔を上げるとそこには、同じく呼び出された男子生徒が立っていた。 「宮園さんだよね!俺、小日向。俺も、呼び出されたから一緒に行かない?」 「えっ…と。」 ───小日向翔。 一言で言うなら、クラスの人気者。 スポーツ万能で持ち前の高身長を生かして、中学時代はバスケットボール部に所属し、県大会出場の常連。外見は爽やかでかっこよく、性格も人懐っこくて明るいので男女共に人気だ。 私とは、無縁の人である。 もはや、同じ空間にいて存在を認知されているだけでも凄いことだ。 「嫌かな?」 「あ…えっと、嫌じゃないです。」 「じゃあ、行こう!!」 拒否する理由も無く首を縦に振って、小日向くんの後ろに着いて行く。 あまりの組み合わせにクラスの視線は、スピーカーから私達へと移り変わった。 クラスの痛い視線を感じ、小さなため息をつく。 ──本日初めてのため息だ。 私は、それから身を守るように背の高い小日向くんの背中を壁にして歩いた。
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