第一章

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「単刀直入に言うと、小日向くんは三十点以下で、赤点。」 「だろうな…。」 「そうなの!?」 驚く私を、二人はぽかんとした顔で見る。 何か、変な事を言ってしまっただろうか。 私は、双方を見ておろおろとした。 「宮園さんってさ、反応いいね。「」 「全然良くないよ!ていうか、小日向くん勉強苦手なんだ、以外かも。」 「うん。俺、運動専門だから。」 「確かに、完璧な人はいないからね。」 「だよな!!」 「小日向くん、勉強しなさい。」 先生の一喝で、和やかになったかと思われた雰囲気は消え去る。 私と小日向くんは、目を合わせてお互い渋った表情をした。 「聞いた話によると今回の考査は、他の教科も赤点又はギリギリ。このままだと、期末考査で大幅に挽回しないといけない。できない場合は、夏休み無しになってしまうよ。」 「夏休み無し…。」 先生の言葉に、小日向くんは凍ったように固まってしまう。 それもそのはずだ。 高校生活で夏休みは、文化祭や修学旅行等の行事に負けないくらい楽しいだろう。 小日向くんのことだから、予定も沢山あるはず。 「これは、忠告だよ。そのために呼んだからね。ちなみに、宮園さんは成績に全然問題ないから大丈夫。」 「…はい。」 先生は、私の方を見て優しい声色で言った。 何とも言い難い雰囲気に、声が小さくなる。 「じゃあ、なんで宮園さん呼ばれたんだ?」 「あぁ。それは、前回のノートチェックでノート返すの忘れてたからついでに呼んだんだ。」 「それだけですか…」 「それだけ。思い出した時にやらないとすぐ忘れちゃうからね。」 そう言って先生は、ノートを私に差し出した。 たった1冊のノートで、昼休みに呼び出されるなんて思いもよらなかった。 しかも理由が、さすがおじいちゃんである。 「宮園さん、どんまい。」 「いや、小日向くんにだけは言われたくないか ら。」 彼は、赤点をとり忠告されたばかりなのに、ヘラヘラと楽しそうに笑っている。 その様子を見て、自分の事のように心配になった。
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