ソアへの嫉妬

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ソアへの嫉妬

「なんと、殿下が見習い女官を 熙政堂に留めたというのか!」 「はい、大妃様。膝の上で殿下が お休みになられたとか」 殿下には側室が数名いたが中殿が 決まっていない。つまり世子が いないということだ。 側室にも子がいない為大妃は 焦燥感に駆られていた。 「領議政や右議政達は見習い女官を 側室にすることは反対するだろう。 しかし、そのような事を気にして いたら世子は産まれない。 提調尚宮、信頼できる内人を 熙政堂へ向かわせ、見習い女官を 見張らせよ。殿下の寵愛ぶりを 確認したい」 「はい、大妃様」 提調尚宮は持ち場に戻り、内人を 熙政堂に送ることにした。 自分が見張られている事など 知らないソアは普段通り仕事を こなしていた。 殿下から耳飾りを頂いた次の日から 至密の内人に細かい仕事内容を教わって いたが、ソアに対する対応が明らかに 変化していた。 「ここも早く掃除して。こんな 仕事もできない見習い女官を ここに配属されても困るわ」 「汚れが付いてる!やり直して」 身分の低い見習い女官であるソアが 殿下に拝謁し、耳飾りを頂いた事に 嫉妬しているのだ。 それでもソアは、一生懸命仕事を こなしていた。毎日何時間も 雑巾を洗い、床を拭いていた為 とうとう手に力が入らず、雑巾に 血が染みていた。 夜遅くまで掃除をしているソアを 見た殿下が声を掛けた。 「どうして夜遅くまで仕事をしている。 誰が命令した?」 「殿下、手をお離し下さい! 汚れてしまいます」 殿下の手を振り払おうとしたが 強く握られた。 「痛いです、殿下。離し・・」 「どうした、怪我をしているのか。 見せてみろ」 ソアの手の平を見た殿下は言葉を失った。 細かい傷や、まめから血が出ていたからだ。 直ぐに医官を呼び、傷の手当てを させることにした。
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