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殿下の気持ち
「今日は宣政殿にて議論があり
終わり次第、秘苑に行き散歩される」
「分かりました、至密尚宮様」
殿下の側で仕える為、1日の日程を
把握する必要がある。確認した後
至密尚宮、内人に続いてソアが後に続く。
宣政殿に到着し、議論が終わるまで
近くの場所で待つ。
何時間か経った後、殿下は皆にこう告げた。
「今後見送るのはテオ内官とソア
だけでよい。至密尚宮は内人の
教育に専念せよ。この前の件が
繰り返されれば、分かっているな」
「はい、殿下」
ここにいる全員が驚いた。通常尚宮や
内人が付いて歩くが、殿下はそれを
拒否し、見習い女官であるソアを
指名したのだ。
皆が持ち場に戻った後、殿下に尋ねた。
「殿下、どうして私を指名したのですか?
尚宮様がいた方が良いのでは・・」
「いいや、至密尚宮には内人を教育
する義務がある。もしまた何か
問題が起きれば、取り返しが
つかない事が起きるかもしれない。
宮廷は恐ろしい場所なのだ」
殿下の言葉は正しい。陰謀が渦巻く
宮廷や後宮は恐ろしく、自分の出世の
為なら女官は簡単に殺される。
ソアに矛先が向かう事を殿下は
最も恐れていた。だから常に側にいるよう
指名したのだ。
「分かりました。これまで以上に
気を付けます」
話をした後、殿下とソアは秘苑に向かい
彩り豊かな花や蝶を見ていた。
「ソアといると、この景色が更に美しく
見えるな。心が穏やかになる」
「このような綺麗な場所を見るのは
初めてです。私も殿下と一緒に
見れて嬉しいです」
この言葉を聞いた殿下は手を握り
真剣な目でソアを見つめた。
「聞いて欲しい事がある。私はソアの事が
好きだ。いや、愛している。
一目見た時から、運命の相手だと
思った」
殿下の目を見て冗談で言っているようには
見えなかった。ソアも殿下の事を思って
いたが、気持ちに答えていいのか
分からなかった。
「急に言われても驚くだろうが
どうか受け入れて欲しい。
一番近くで、私を支えてくれないか。
絶対にそなたを守ってみせる」
はいと答えればソアは側室になると
承諾したことになる。自分が後宮で
やっていけるのか不安だったが
殿下の言葉を信じ、首を縦に振った。
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