貴人の訪問

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貴人の訪問

尚宮がナユンに決定し、側室としての 仕事を順調にこなしていた頃ある出来事が 起こった。 「淑媛媽媽、貴人様がいらしております」 「・・通して下さい」 貴人自ら来ると思っていなかった為 戸惑いを隠す事が出来ない。 「突然の訪問すまない。そなたと 直接会話がしたくて来たのだ」 「そうでしたか。このような 物しかありませんが、召し上がって 下さい」 ジウとユナに頼んでおいた菓子を 机の上に置いて、茶を入れた。 「用が済めば戻るので気遣いは不要。 単刀直入に聞くが、何故私の部屋に 来なかった?まずは貴人である私に 挨拶するべきだと思わなかったのか」 「申し訳ありません。貴人様は習い事や 職務に忙しいと思い、訪問を取り止め ました」 至密尚宮や提調尚宮に忠告された為 できるだけ貴人に関わらないように した対策が、裏目に出てしまった。 「それが本音ではなかろう!何を 聞いたのか知らないが、一番下位の お前が何故私に礼を尽くさないのだ」 「確かに私は側室の中で下位です。 しかし、私は貴人様に仕えよと命は 下されておりません。 側室の役目は殿下や民の為に尽くす事 ではないのですか」 法に淑媛が貴人に挨拶をしなければ ならないという文言はない。 しかし、貴人は寵愛を受けている淑媛が 気に入らない為八つ当たりしているのだ。 「何を偉そうに。殿下の寵愛を得ている からといって調子に乗るな!」 激昂した貴人は目の前にあった湯呑みを 淑媛の頬目掛けて投げた。 「お前のような者が寵愛を受けるなど どうかしている。今に見ておけ淑媛! 必ずお前をから引きずり 下ろしてやる」 そう言い残した後、急いで部屋から出て いった。ナユン・ジウ・ユナは淑媛の 側に向かう。 「・・頬から血が出てる!手も火傷 しているわ。医官を呼んで」 「分かった。私達が行ってくる」 ナユン尚宮が内人に指示した後淑媛は 口を開いた。 「ナユン尚宮、このことは誰にも 言わないでくれ。殿下に知られれば 何をされるか分からない」 「・・はい、媽媽」 以前淑媛をいじめた女官に棒打ちを 命令した件を思い出していた。 殿下なら貴人を降格し、重い罪を与えるに 違いない。もしそうなれば朝廷が騒がしく なり、自分に対する批判も高まる。 それだけは避けたかった。
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