淑媛の怪我

1/1
前へ
/51ページ
次へ

淑媛の怪我

「殿下、ミン内官から連絡が。 貴人様が淑媛媽媽の部屋へ来た そうです。帰った後内人らが 医官を呼びに行ったようです」 「医官だと!まさか淑媛に怪我を負わせた のではなかろうな。テオ内官、淑媛の 所へ」 貴人が何か仕掛けてくると思い淑媛に 近付く事を禁ずると命を出しても 効果がなかった。貴人に対する僅かな 情も、跡形もなく消えていった。 「ソア、ソア!」 「殿下、どうしてここに?まだ 公務の時間では・・」 「そんな事は気にするな。それより 貴人に何を・・」 殿下の表情が険しくなる。理由は明白 だった。ソアの頬には痛々しい傷があり 首元には包帯を巻かれていたからだ。 「何と、そなたの綺麗な頬にこんな 傷をつけ、その上火傷まで。 傷は直るのか?」 「はい、一週間もあれば頬の傷は 治るそうです。しかし、首元は・・」 ソアはこれ以上語ろうとはしなかった。 様子を見た殿下は医官を呼び説明させた。 「淑媛媽媽の首元にかかった湯が熱く 傷口から水疱が見られた為 完全に痕が消えるとは断定出来ません」 「この傷を治すためなら、宮廷にある 薬を使っても良い。必ず治してくれ」 「はい、殿下。最善を尽くします」 医官は早速薬の調合をするため、席を 外した。殿下は淑媛の手を握る。 「ソア、すまない。私のせいだ。 あの女を側室にしたばかりに」 「殿下のせいではありません。私が 悪かったのです。つい言い返して しまいました」 淑媛は貴人と何があったのか全て 話した。殿下の表情は更に険しくなった。 「そうか、ソアの言う事が正しい。 そなたが寵愛を得ている為 気に入らず、このような事を したのだろう。この件は私に任せよ。 貴人は法で裁く」 告げた後、殿下は貴人本人と父親を 宣政殿へ呼び裁判が始まった。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加