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◇   ◇   ◇ 「ふぅ……迷惑かけちゃってごめんなさい」 「いいのよ。落ち着いたのなら、良かったわ」  1DKの一人暮らし用マンションに帰ると、のっぺらぼうは泣きまくる私を放っておけなかったのかホットミルクとタオルを用意し、ずっと近くで泣き止むのを待っていてくれた。  ああ、こんなに他人から優しくされたのなんて久しぶりかも。他人ていうか、他妖怪(?)だけど。  のっぺらぼうは、つるりとした頬に手を当てながら首をかしげた。 「それにしても、何か辛いことでもあったの? 良かったら私、話を聞くわ」  なんて人の良いのっぺらぼうなんだ。 「や……優しい〜、タマ子さん〜」 「た、タマ子さん!?」 「うん、たまごみたいなお肌だからタマ子さん。あ、名前他にあるの?」 「いや、ないけれど……ま、まぁいいわ」 「あ、ちなみに私は折原やよい。やよちゃんとでも呼んでね」 「じゃあ、やよちゃん。何か辛いことでもあったの?」  タマ子さんの声は優しい。  私はぽつりぽつりと最近の忙しい仕事のことを話し始めた。  去年、会社全体による未曾有の大きな人事異動があって、慣れない部署へ異動になったこと。その部署の事務員となったけれど、人手不足が続いていること。それなのにバタバタと辞めていく人が多いこと。 「二ヶ月前に一番近かった先輩も辞めちゃって、他の部署から人はまわされてこないし、しかも来てもらえるはずだった派遣さんもキャンセルなるしで……もう仕事がいっぱいいっぱいなの〜!」 「あらあら、それは大変だわ。上司には、相談できてるの?」 「うん、一応。でも駄目。あの鈴本の野郎、全然動いてくれないんだから!」  つい、鈴本部長への悪態が口をついて出る。  そして思い出すのは、今日言われたあの言葉。
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