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2人は黙って練習を眺めた。
春の柔らかな夕陽に照らされる市街地や瀬戸内の海が遠くに見えた。
キャッチャーがボールを受ける音、打者が快音を響かせて打ち返す音、景色や音のすべてがお嬢の気分を落ち着かせた。
不快な感じが無く、すべてが自分の中に溶け込むような音。
そうだ、音って大事だ。
私はどんな音を出していたんだろう。先生は不快だと言っていた。私のピアノが駄目だと言っていた。
今までそんなことを言われたことは無いけど、私は今までと違うことをやっている。
今、気付かないといけない事かも知れない。
「美咲さん。一緒に居てくれてありがとうございました。まどろみさん達に心配かけるし、そろそろ戻りましょう!」
「うん!」
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