第40話 美咲モノローグ

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第40話 美咲モノローグ

 部室に行くと、真知子先生は既に来ていてコーヒーを飲みながら演奏を聴いていた。  あたしは声には出さずに「遅れました、すいません」と少し頭を下げて入室する。  今日の演奏は素人のあたしでも分かるくらいバランスが良く心地良い。日本茶を飲みながら聴きたいなあ。でも記録をしなきゃ。  スマホで動画を撮る。先生はコーヒーをおかわりしてる。良かった、美味しく飲めているんだろう。  演奏が終わると先生は軽く拍手をした。 「うん、コーヒーを楽しめた。音というのは心持ちを少し変えるだけでこれだけ変わるものだ、それを覚えておくように」  普段は雑でいい加減だけど、演奏に関しては厳しい先生だ。音楽は素人だと言ってだけど、ほんとにそうなのかな。 「すぐ戻ってくる。練習を続けておけ」  そう言って先生は出て行った。お嬢はすぐにヘッドフォンを付け、自主練を始めた。納得出来ない点があるんだろう。  亮はまどろみさんと、同じ箇所を繰り返し歌っている。こちらも納得出来ない点があるんだろうか。  この2人の距離感は(はた)から見るとすごく近い。この距離感だとまどろみさんが亮に惚れるのは仕方がないと思う。亮はどう思っているんだろう。  さっき香風(このか)に聞いた千歳の話はホントなんだろうか。もしそうだとしたら…まどろみさんが傷付いたりしてほしくない。恋の応援なんてしてて良いんだろうか。  あたしも亮を観察しないといけないかも知れない。香風が同好会に入ったら、そこの利害は一致する。仲良く出来ないかもしれないけどそこは妥協しよう。  粉末の緑茶にお湯を注ぎ、ふうふうと冷ましながら飲む。  あ、そうだ、地下アイドル・アニカを調べてみよう。
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