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部室の中では、みこが寝ている横で亮がギターのチューニングをしていた。
なんだ、つまらんな。この生徒を尋問したほうが面白そうだ。
「来い、声を出すなよ」
わたしは首根っこを掴まれて階段の踊場に連行された。
「あ、1組の宮前先生」
わたしは無駄な抵抗は諦めて、従順な生徒を演じることにした。
「お前は?」
「わたしは3組の桜谷香風です」
「覗き魔か?」
「違いますよ。部活がまだ決まってなくて…1組の安井宮子さんにこの同好会を勧められたので様子を見に来たんです」
「ほお、こんな時間にか?もう下校時間だ、活動は終わってるぞ」
私は何でも知っている、とばかりに全てを見透かしたような眼差しだ。
「え、ええ、だから明日出直そうかな…」
「そうか、わかったぞ。部室に入りにくいんだな。明日の放課後、職員室に来い。私が一緒に行ってやろう」
「いえ、明日はレッスンがあるので無理です」
「なんのレッスンだ?」
「ダ、ダンスです」
まずい、地下アイドルをしていることが学校にバレたら停学くらいにはなるかも知れないし、活動を辞めさせられるかも知れない。具体的な話は避けないと。
「ふーん…ダンスか、なるほどな。よしわかった。じゃあ昼休みに職員室に来い。来なかったら校内放送で呼び出すぞ」
この先生の校内放送は恥ずかしい。呼び出されるのは目立つから嫌だ。
「お弁当を食べたら絶対行きます」
「よし、じゃあ下校時間だもう帰れ」
解放されたわたしは逃げるように階段を下りた。
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