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「中島みゆきさんの「糸」です。私クラシックばかり聞いていたんですけど、この前、曲を探している時に聴いて感動しました。歌詞が良いんです」
「なるほど、カバーしてるアーティストも多いし名曲だよね。うん、じゃあその3曲に決まり」
有無を言わせぬ進行、敏腕プロデューサーだ。
「じゃあ楽譜はあとで真知子先生に頼んで、今はマリーゴールドをやってみようか?」
「わかりました。まどろみさんが寝ているので香風さん!歌ってみましょう。美咲さんは口パクで良いから雰囲気を味わってください!」
亮とお嬢は有無を言わせず演奏を始めた。
香風は堂々と大きな声で歌った。上手いとは言い難い。音程が外れリズムもとれていない。
あたしと同じくらい下手だなあ。でも口パクだけどアイドルやってるんだ。
亮もお嬢も何も言わない。笑ったりしない。ここでならあたしも歌えるのかな。
「香風さん、次は口を閉じて喉に力を入れずにハミングでやってみてください。美咲さんも口パクはやめてハミングで」
「うん…ハミングなら良いかな」
お嬢に乗せられてみよう。何年ぶりだろうか、あたしは曲に合わせてハミングをした。呼吸が合わない。うまくリズムに乗れない。
「美咲…」
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