第62話① 恋バナ 安井宮子

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「宮子って昔から浮いた話が全く無いけど恋バナなんてあるの?」 「私は恋多き女よ、今だって3人に恋してるわ」 「え?本当ですか?宮子さん、凄いですね」  お嬢が目を輝かせて話に食いついたけど、あたしは嫌な予感がした。 「どんな人ですか?」 「え~、それ聞く~?恥ずかしいな~」  そりゃ恋バナなんだから聞くよ。聞かれて満更(まんざら)でも無さそうだし。 「1人目はね、とっても強い男なんだ~。いつも黒衣を(まと)ってて右手には剣を持ってるの」 「剣を持ってるんですか?!」  嫌な予感は的中した。お嬢、これ2次元旦那の話だよ。早く気付こうよ。 「そうなのよ~、長さが1mほども有る剣を持っていてね、彼がそれを振り回すと閃光が走って周りの魔物や野獣が倒れていくの」 「す、凄いですね」 「しかもね、敵味方が入り乱れてても、敵だけが倒れていくのよ、凄いでしょ~」 「その男の事は私も知っている。とても強い男だな」  たまに深夜アニメを見ていると言ってたから、まどろみさんも知ってるキャラみたいだ。 「え、お2人の共通の知り合いなんですか?どこで知り合ったんですか?」  お嬢、もしかしてワザと?分かってて話に乗っかってるの? 「それはね、深夜の異世界よ。ね、まどろみさん」 「そうだな、あれは半年ほど前、水曜日の深夜2時になると現れたな」  まどろみさんも完全に乗っかった。 「そうなの、12回だけ私の前に現れて去っていったのよ~…恋心だけを残して」 「切ない話ですね」 「はい、終了終了、どうせレコーダーに録画して毎日会えるようになってんでしょ」 「バレたか。残り2人の話も聞いてよ、香風~」 「もう良いっての。どうせ同じような話でしょっ」 「宮子さんは3次元に好きな人は居ないんですか?」 「3次元?ふっ、無い無い」
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