第62話③ 恋バナ 小清水泉

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「うわぁ、ほんとに?まさかの禁断の恋ってやつだね~」  もしかすると優秀だったお嬢がすんなりと外部進学出来たのは、これが原因だったのかも。 「禁断?…いいえ、清い交際でしたよ。一緒に映画を見たり、USJに行ったり、高校野球も見に行きました。楽しかったなぁ…」  遠くを見るような目で過去を振り返る。 「今は?過去形なの?」 「はい、ある日突然、先生は転任したんです。その後は連絡も取れなくなりました。誰に聞いても転任先も連絡先も教えてもらえなかった、なんでだろう…。あの時は悲しかったな…毎日枕を濡らしました。9回裏までずっとリードしていたのに逆転サヨナラホームランを打たれてマウンドに崩れ落ちるピッチャーくらいショックで悲しかったです」  すごく悲しそうな顔をするお嬢。辛い別れだったんだろうなあ。野球の例えはよくわからないけど…。  でも、きっと先生が転任した原因は禁断の恋だ。お嬢はわかってないみたいだけど。先生が学校を去ることで、お嬢は学校に残れたんだ…。  お嬢は昔を懐かしむように言った。 「ふざけて抱きついたりすると、お胸の大きい先生で、弾力があって気持ちよかったなあ、ぼよ~んって。淡くても真剣な初恋でした」  ん?  ぼよ~んって? 「ええと、お嬢、それは太った男の先生ってことだよね?」 「いいえ、スレンダーな女の先生でした」 『そ、そうなんだ』  それを否定する気はさらさら無いけど、びっくりした。うん、只々(ただただ)びっくりだ。 「思い出の多い学校に居るのも辛かったし、高校野球が好きだから、親や学校の勧めもあって野球部のある高校にしたってわけです。そのおかげで皆さんと出会うことが出来て嬉しいです!」 「そっかあ、うん、私たちもお嬢と会えて嬉しいよ。時間あるときは野球部見に行こうね~。良い男を探そう、応援するよ!」 「はい、次は先生じゃなく同じ年頃の人と恋愛しますよ!」  お嬢、次は同じ年頃の人と恋してみようね。 「切ないけど良い恋バナだったね~。まあ画面越しにしか想い人に会えない私のほうが切ないけどね」
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