第64話 小さな東屋

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 バス停に向かって歩くと、強い風が吹いて雨の匂いがしてきた。  さっきまで晴れていた空は暗い雲に覆われ始めた。バスに乗るとすぐに雨が降ってきた。  まどろみさんは中学生の時に小さな公園で起きた出来事を話してくれた。  きっとそれは亮と千歳だとあたしは思った。  バスを降りると折り畳みの傘が壊れてしまいそうな風と雨。その中をしばらく歩くと小さな公園に着いた。  あたしたちは急いで小さな東屋(あずまや)の下に駆け込んだ。 「なんなのこの雨。濡れちゃった~。まどろみさん寒くない?大丈夫?」  ハンカチで髪の毛を拭きながら聞いた。でも返事が無い。あたしはまどろみさんのほうを見た。呆然と立っていた。 「…まどろみさん?」 「あの時歩道に立って居たのは亮だ。やはり私は昔ここで、千歳と亮に会っている…」  まどろみさんは小さく震えていた。雨に濡れて寒いからではなく、激しい動揺のせいで。  あたしはしっかり手を握り締めてまどろみさんを落ち着かせようとした。でも…。  小さな公園、小さな東屋(あずまや)、それから雨。  この場所は、そう、あの時…。  あたしは思い出した。
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