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そこには先客が居た。同じ歳くらいの女の子。何か困っている様子だ。
「どうしたの?」
引っ越して来たばかりで道に迷ったらしい。
「携帯をお家に置いてきてしまって連絡することも地図を見ることも出来ないんです」
あたしは住所を聞いて、雨が上がると家まで送ってあげた。同じ中学だったら良かったのに隣の西中の校区。表札には羽衣と書かれていた。
「ありがとう」
「あ、これメッセージのID。美咲って名前だから。良かったら友達申請してね」
「うん、私は千歳です」
あたしはメモを渡す。メッセージアプリを始めたてで友達の人数を増やしたかったから。
家に帰ってその話を親にすると、あたしは怒られた。知らない人にIDを教えたらダメだって。
でもその心配を余所に、その子から友達申請が来ることは無かった。
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