第70話 横雨(よこさめ)

2/2

33人が本棚に入れています
本棚に追加
/472ページ
 少しするとポツポツと雨が降ってきました。さすが私です。  雨が降る前に雨宿り、先見の明があります。でも雨風が激しくなると小さな東屋の下を雨が通り抜けます。これでは雨宿りになりません。不覚でした。  その時、バシャバシャと水溜まりをはじく音がして、ずぶ濡れの女子が東屋の下に入ってきました。  同じ年頃くらいの女子。    濡れた髪の毛が顔に貼り付いていて怖い雰囲気です。話しかけることはせずに黙ったまま雨がやむのを待ちました。  でも、 「あなたも寂しいの?」  急に話しかけられました。  濡れた髪の毛の隙間からジッとこちらを見ています。背筋がゾクッと寒くなり鳥肌が立ちました。  見た目が怖いとかではなくて、全てを見抜いたようなその鋭い眼光と物言いが怖かったのです。  怖さに何も言えずにいると、 「寂しいのはつらいね…」  そう言うとその子は傘を差して、公園を出て行きました。  まるで隣に背の高い誰かが居て、その人と相合い傘をしているかのような傘の持ち方でした。 「千歳~っ」  少しすると、今度は小柄なツインテールの女子が走って来ました。 「すいません、ここに女の子来ませんでしたか?」  さっきの女子が去っていった方向を指差すと、ツインテール女子は 「ありがと」 と言って走って行きました。
/472ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加