第72話 香風とみこ

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「まどろみさん、あとは私に任せて下さい」  そう言うとお嬢は香風をしっかり抱き締めた。 「思いっきり私の胸で泣いてください。私たちが香風さんを呪縛から解放してみせます。だから安心して今は泣いてください。これからは、ひとりで抱え込まなくて良いんです。私たちを頼ってください」  香風はお嬢にしがみついて声を出して泣いた。今まで(こら)えてきたものを全て吐き出すような大きな声で。  あたしと宮子も貰い泣きをした。  でもお嬢は涙を見せずに、優しい顔をして香風の頭を撫でながら抱き締めていた。中学の時に付き合ってたという女の先生にお嬢もそうして貰っていたのかも知れない。  あたしはまた、お嬢の違う一面を見た気がした。 「よーし、そこまでだ」 「先生…」  あたしは涙を拭きながら聞いた。 「…授業はどうしたんですか?」 「はあ?それは私のセリフだ、バカ者っ。全員生徒指導室に…いや、部室のほうが良いか…部室に来い。人目につかないように移動するから私の後について来い。香風、お前は保健室に行ってることになっているから心配するな」
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