第73話 5限目は部室で珈琲を

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第73話 5限目は部室で珈琲を

 教室の廊下側の窓から見られないようにしゃがみながら歩いたり、上履きを脱いで足音を立てないように忍び足をしたり、階段を上ったり降りたり、少し遠回りをしながらも、誰にも見つかることなく部室まで移動することが出来た。  先生は鍵を取り出した。 「なんだ?美咲」 「先生いつも部室の鍵持ち歩いてるんですか?」 「当たり前だ、いつでもコーヒーが飲めるように合い鍵を作っておいたんだ。毎日昼休みに鍵を持ち出すと怪しまれるからな」  真知子先生、毎日部室で食後のコーヒーを飲んでるのね。 「ふう、誰にも見つからなかったようだな…まずは落ち着こう。コーヒーを飲みたいやつはいるか?私がいれてやるぞ」  いつも先生とコーヒーを飲んで雑談している宮子が手を挙げた。 「紅茶を飲みたい方は居ますか?私がいれますよ」  香風(このか)が手を挙げた。あたしは紅茶の味がわからないけど、お嬢のいれる紅茶はとても美味しいらしい。さすがお嬢様だ、と香風はいつも誉めている。 「お茶を飲みたい人は…まどろみさん、飲む?今日は玄米茶だよ」  コクリと頷くまどろみさん。いつものように濃いめのお茶をいれてあげた。  コーヒーと紅茶、玄米茶の匂いが入り混じる部室。でも自分のカップの湯気をゆっくり吸い込むと、気持ちが落ち着く。  冷静になると、授業をサボるなんて…とんでもないことをしてしまったと思う。
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