第73話 5限目は部室で珈琲を

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 まどろみさんが口を開いた。 「授業をサボってしまい、すいませんでした」  あたしたちも頭を下げる。 「私も授業をサボってるぞ、君たちと同じだ。それで?何があった?」  宮子がかいつまんで話した。千歳と亮のこと、香風のこと、まどろみさんと亮のこと。これからどうしていくつもりなのかも。 「なるほど…」  真知子先生はコーヒーカップをゆっくりと机に置き(しば)し考えた。 「千歳に見せつけるのはやめておけ」  真知子先生は眉間(みけん)に皺を寄せた。 「それで諦めが付けばいいが、嫉妬や憎悪の念を生み出したらどうする?手に負えなくなる。酷だよ、残酷だ」  確かにそうだ。悪い方向に行ってしまうときっと取り返しがつかない。  あたしたちは間違った方向に行きかけていたんだ。 「感情的になり過ぎました」 「いや、感情は出しても良い。思いっきり出して良いんだぞ。恥ずかしくても不様(ぶざま)でも、もっと感情を(あら)わにしたらいい。いつか大人になったら、出したくても出せない時が来る。自分の中に封じ込めないといけない日が来るんだ。でもその時になっても、君たちは感情を出しあえて受け止めあえる仲間であって欲しい。今はそのための大事な時間だ。授業では得られないものだよ」  真知子先生はゆっくりコーヒーを飲み干して続けた。
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