第76話 先生のコーヒー

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 先生は棒読みで言った。私は笑いながら答えた。 「先生、それパワハラですよ。会社とかで上司が部下に「俺の酒が飲めんのかー」って飲酒を強要するやつですね」 「うむ、さすがは大人の世界をよく見てるな。地下アイドルの活動は楽しいか?」 「はい、楽しいです」 「一度見に行かせて貰うぞ、その時には(くち)パクじゃなくなってたら良いんだがなあ」 「そんなすぐには無理ですよ。あの…コーヒーをいただきます」  先生は新しい豆を轢きコーヒーをドリップしてわたしのマグカップに入れてくれた。  わたしは黙ってコーヒーを飲んだ。ほろ苦いけど、今の気分ならこういう苦みも良いかな。  先生は何も言わない。ただ優しくわたしを見守ってくれている感じがする。
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