第78話 香風と千歳

2/3

33人が本棚に入れています
本棚に追加
/472ページ
「まあ良いだろう。千歳の現在の写真はチケットを渡すときに、ツーショットで撮ろうと言って撮っておけば良いだろう…メッセージの受け答えを見る限りでは、病んでるとは思えないんだが…」  亮が口を開いた。 「俺の顔を見たときに感情の起伏が激しくなりました。声を出して笑ったり、ニヤニヤしたり…、かと思ったら急に走り去って行ったり。それからしばらくの間、無言電話とかが有りました」 「あとカップルを見かけた時に逆上することもあります」  わたしは付け加えた。 「カップルを見たらケッて言ってみたり、カップルを見たら後ろから静かに接近して膝カックンしてダッシュで逃げたり、カップルを見たらその真ん中を突き進んで行ったり…」  真知子先生はコーヒーを飲みながらふむと考えた。 「それは病んでいると言うことではなくて、急に終わった恋が消化出来ずに、自分の感情を吐き出している状態なのかも知れないな。千歳と言うのは元々はどんな人物だった?」 「素直で人当たりが良くて優しくて、でも芯がしっかりあって根性のある子です。バスケは下手だったけどホントに頑張ってた…」  わたしは亮を見ながら言った。まどろみさんを膝の上に座らせている姿に腹が立ったけど、不安そうに話を聞くまどろみさんの顔を見たらそれ以上何も言えなくなった。
/472ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加