第79話 千歳との再会に向けて

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「先生、北高祭で千歳を待ち受けずに、こっちから千歳のところに出向く、これ以外に北高祭を無事に楽しむ方法は有りません」 「よし、分かった…お前の決定を尊重しよう。校外での活動になるから私の目が届かない。亮と2人で行くなら大丈夫だとは思うが、細心の注意を払えよ。相手の気持ちをしっかり読み解いて、呪縛をほどいて来い」 「はい!じゃあ亮、日時、場所が決まったら教えるね」  わたしはみんなのほうを向いて言った。 「その時お約束のようにどこかに隠れて様子を見ているってのは無しよ」  香風の表情は真剣だった。あたしはその表情に気圧(けお)された。でも… 「何を言ってるんだ香風。亮が他の女と行動を共にして他の女に会いに行くのを黙って見過ごせと言うのか?全力で阻止するっ…という訳にいかないから、私も付いていくぞ」 「え?いや、まどろみさん…」 「それに私は、千歳に傘を返さないといけないんだ」 「まどろみさんだけを危険な場所に送り込む訳にはいかないわ、あたいも付いてくっ」 「危険な場所って、宮子…」 「それに私は、千歳という子に会ってみたいんだ。雨を降らす能力者かも知れないからね~」 「ずるいですよ、皆さん。そうやって私を除け者にしようとしても、そうは問屋が卸しませんっ。私も行きます」 「そうは問屋がって、言い回しが古いよ、お嬢…」 「それに私は、千歳さんにあのとき聞かれた質問の返事をしていません」  あなたも寂しいの?って聞かれた時の返事のことだね。  それにしても、この流れは次にあたしが何か言わなきゃいけないヤツだ。うーん…。やれやれ、思った通り、みんながあたしを見てる。何か言わなきゃ…。 「あ、あたしも行くよ。えーっと…」 『えーっと…?』 「それに私は、千歳にメッセージのID教えたのに放置されてるから、ひとこと言ってやらなきゃ」 「それはダメですよ美咲さん。友だち申請をしたくない人に無理強(むりじ)いするのは可哀想ですよ」  ほらやっぱり。いつも通りの展開。 「ではこれで、千歳さんにはみんなで会うとことに決まりましたね」 「能力者だったら良いな~」 「香風、いつどこで会うか決まったら必ず教えてくれ」  いつどこで…あたしは思った。きっと亮と千歳の再会の場所は、あの小さな公園の小さな東屋の下になる。そしてその時、風が強くなって急な雨が降るんだろうな…。
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