第83話 能力者は居ないってのに

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 その時、強い風が窓をガタガタと揺らし、雨粒があたる音がした。あたしたちは慌てて窓を閉めた。 「千歳さんの話になった途端に雨ですね」  朝の天気予報で、午後から天気が急変して雨になるって言ってた通りになった。うん…予報通り。  だから宮子の言うような能力者なんかじゃない、偶々(たまたま)だ…だいたい現実世界に能力者なんて居ないよ…ね? 「じゃあみんなの予定を踏まえて、千歳に会うのは来週の水曜日か金曜日。あとは千歳に予定聞いとくね」  緊張した面持(おもも)ちの香風。亮も黙って頷いている。中学時代に残してきたことを終わらせる…香風や亮、もちろん千歳もここから先に進むために。  その後あたしたちは黙々と練習した。香風は音程が不安定ながらも大きな声を出して歌えるようになってきている。  あたしも香風ほどではないけど、声を出して歌っている。音程は外れっぱなし、でも誰も笑わない。小学生の時のトラウマを乗り越えて先に進むためにあたしは歌う。
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