第85話 決戦は水曜日

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第85話 決戦は水曜日

 月曜日。今日は北高祭のチケットが配布される日だ。  千歳に会うまであと2日。香風(このか)は既に落ち着かなくなっている。水曜日はもうすぐだ。 「香風、落ち着かないね。便秘解消しそうなの?」  そわそわと落ち着かない香風の様子を見た友だちが、からかい気味に言ってきても、 「もうすぐよっ」 と、便秘が解消しそうだと間違えられそうに答えてしまう始末。  3組で授業をしていた真知子も、その落ち着かない様子を見かねて、扉を指差しながら冗談混じりに言った。 「桜谷、落ち着きがないぞ。なんだったら行ってきて良いぞ」 「はあ?違うっつーの」 「そ、そうか、それは失礼したな」  授業が終わると真知子は香風を廊下に呼び出した。  香風はさっきの横柄な返事を怒られるのだと思った。 「気が向いたら食後のコーヒーを飲みに来い。話をしなくても、香りを楽しんで黙って飲むだけでもかまわんぞ」 「は、はい…」  香風は少し落ち着いた。ちゃんと見てくれている人がいる。それは心強く、気持ちを落ち着かせてくれた。  昼休みは言われたように部室に行き、黙ってコーヒーを飲んだ。相変わらずほろ苦い。先生も黙っている。でもそれが気分を静かに落ち着かせてくれる。 「ありがとうございました。水曜日に千歳に会います」  それだけ伝えると、またいつもの便秘ネタになる前に教室に戻った。
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